世界の魔術師たち

みなさんは魔術師を知っていますか。魔術師とは、魔術を使う人のことをいいます。魔術とは、簡単に言ってしまえば、予知や幽体離脱などの超能力じみた術のことです。多くの人はこのような術とは無縁で生きることになるかもしれませんが、魔術を使用する人は実際にいます。今回は、その中でも有名な魔術師を何人か紹介したいと思います。

 

 

アブラメリン

 アブラメリンは、アブラメリン魔術、あるいは真正魔術と呼ばれる魔術を実践、保護していた人物です。アブラメリン魔術は、魔術をこころざす者が、いつかは実践しようと夢見る魔術です。いったん成功すれば、普通の魔術をはるかに超えた超パワーを得ることができるが、万一失敗すれば、待っているのは死か狂気のみだといいます。

 アブラメリン魔術は他の多くの魔術と違って、魔術を行うとき生贄を必要とはしません。アブラメリン魔術で用いるのは、アルファベットを組み合わせたごく簡単な図形だけです。しかし、そのパワーは強烈で、アブラメリン魔術に不可能はなく、また、どんな魔術もそれに対抗することはできないというのが魔術師のあいだの常識です。

 

ダイアン・フォーチュン

 今世紀の名高い魔術師の一人に、ダイアン・フォーチュンという女性魔術師がいます。彼女はわずか4歳のころから幻を見たり、他人の隠された感情を見通せるようになりました。

 やがてダイアンはフリーメイソンの女性グループに加わり、オカルト研究に参加しました。そんなある日、”オカルトの歩く辞書”こと、マイア・カーティフウェップという女性と親しくなりました。このとき彼女から、黄金の夜明け団を紹介されました。

 そんな彼女は、後に、黄金の夜明け団の最高位階のモイナ・マグレガー・メイザースと魔術闘争を繰り広げることとなります。これは意見の相違から仲たがいしてしまったためです。例えばダイアンは、ふと、誰かが自分にテレパシーによる催眠術をかけようとしていることを察知しました。これほどの術を使えるのはモイナ以外にはいません。そのとき、窓の外で「ぎゃあ!」という鳴き声が聞こえました。見下ろすと、いたるところに数十匹の黒猫が座り、彼女めがけて牙をむき吠えたてていました。

 

ウルフ・メシング

 二十世紀最大の超能力者と言えば、なんといっても「四次元男」の異名を持つ、ウルフ・G・メシングをおいて他にいないでしょう。

 メシングは十一歳のとき、早くも超能力を発揮し、ただの紙切れを汽車の切符に化けさせて、検礼にきた列車の車掌を面食らわせています。成長してからは名高い物理学者アインシュタイン博士、精神分析学者フロイト、インドのガンジー首相などに持って生まれた超能力を認められ、世にも不思議な四次元男として有名になりました。

一九三七年メシングは、時のドイツ総統であるヒトラーの自殺と、ナチの滅亡を予言しました。怒ったナチスは、彼をとらえ、銃殺刑を命じました。しかし彼は、処刑寸前にテレパシーを使って警備員全員を一か所に集めておき、そのすきにまんまと逃げだしてロシアに亡命しました。

 

マザー・シプトン

 マザー・シプトンは、予言者としても有名な、十五世紀イギリスの魔女です。彼女の名前は、一六六八年に匿名の作者が発刊した伝記「マザー・シプトンの奇妙で不思議な歴史』によって、はじめて歴史の中に登場します。伝記作者が匿名であることから、マザー・シプトンの実在そのものを疑う研究者もいますが、彼女の名前は、イギリスのナレスボローの洞窟に残されていたり、民衆の心の中に伝説的な魔女として深く刻み込まれています。それに、彼女のものと言われる予言には、二十世紀になってから、みごと的中しているものも多いといいます。

 

アントン・ラヴェイ

 悪魔教会創始者アントン・スザンダ―・ラヴェイは、一九三〇年四月十一日、シカゴで生まれました。物心ついたころから、超自然的なものに魅かれ、『ドラキュラ』や『フランケンシュタイン』などの怪奇物語を読み漁りました。

 ラヴェイはサンフランシスコ・シティ・カレッジで犯罪学を専攻し、サンフランシスコ警察で働くことになります。彼の仕事は、警察署の各課によせられる、さまざまな苦情を処理することでした。裏庭に浮かぶ光る影、不思議な音、UFO、怪奇光線など、人々は真夜中に出会う様々な怪奇現象を訴えてきます。ラヴェイは催眠術や呪文や護符などを用いて、人々の不安を解消してやったため、地方新聞にゴーストハンター、魔術師などとして取り上げられるようになりました。

 ラヴェイの行った仕事としては、悪魔教会の創設が挙げられます。ラヴェイは、四月三十日のヴァルプルギスの夜祭りの日に悪魔教会を創立しました。

 

参考文献

桐生操,『世界史・黒魔術の帝王たち』,にちぶん文庫,1996