恐怖のシリアルキラー その心理を考察する

みなさんはシリアルキラーを知っていますか。シリアルキラーは日本語では連続殺人鬼と訳されます。怖い名前ですよね。今回は、そんな彼らの心理状態を考察してみたいと思います。

 

 

シリアルキラーの定義

 連続殺人(Serial muder)とは、一人(まれに二人)の犯人が一度に一人(まれに二人以上)を殺害し、一定の犯行を行わない期間(これを冷却期間という)をはさんで、また殺害を行い、これを繰り返すタイプの殺人です。よって、連続殺人鬼とは、そのようなタイプの犯行を行う人物のことをいいます。

 

シリアルキラーのタイプ

 シリアルキラーの分類方法は様々なものが考えられますが、その中の一つに、秩序型連続殺人者と無秩序型連続殺人者に分けるという方法が考えられます。秩序型連続殺人者は、計画性があり、被害者を言葉でだまして誘拐したり拘束し、殺す前にサディスティックな行動やレイプを行い、凶器や証拠は隠蔽し、死体も見つからないように処分するものです。無秩序型連続殺人者は、行き当たりばったりで犯罪を行い、突然被害者を襲い、レイプやサディスティックな行動は被害者が死亡後に行い、遺体や証拠、凶器なども現場に放置し、現場は様々なものが散乱した状態であるというものです。

 前者のタイプは、平均またはそれ以上の知能を持ち、熟練を要する仕事についており、配偶者または愛人と同居している社会性のある人物であるのに対して、後者の人物は、平均以下の知能で、無職か熟練を要さない仕事についており、独居か親と同居の社会性のない人物です。

 

シリアルキラーが殺人を犯す過程の心理状態

 シリアルキラーは、犯行を犯す過程で7つの心理状態を経験します。ここでは、その状態のそれぞれを概観します。

1.前兆(アウラ

 行動に変化が起きる前触れとして、日常の現実からの一種の引きこもりが始まります。まず、時間の流れが遅くなったように感じます。また、音と色が強烈になります。匂いも強くなり、ほんのちょっとした圧迫にも敏感になります。或いは、長い空想をするようになります。この状態は、数瞬しか続かないこともあれば、何か月も続くこともあります。

2.徘徊(トローリング

 この段階では、脅迫的観念により、殺人者は新たな獲物を探し始めます。それまでに行った観察、空想、歪んだ欲求に導かれて、獲物と出会うチャンスが一番ありそうな場所へと向かいます。郊外のショッピングモールの駐車場、夜の暗い街路などです。また、殺人者は、極めて用心深くなり、集中力も高まっていきます。

3.求愛

 連続殺人者は被害者に近づくと、まず相手の心から疑いを取り除きます。例えばシアトルの法科定時制学生のテッド・バンディは、人を惹きつける少年のような振る舞いを身に着けていました。被害者の女性たちはそこに魅せられ、彼に近づいてしまいました。

4.捕獲

 これは急激に行われることもあります。例えば車のドアをノックする、窓から突然押し入る、一発で相手が目を回し、殺人者の足元で身動きもできなくなるように、素早くタイミングよく殴打を加える、という具合です。また、これから行う殺人の詳細を被害者に詳しく話すこともあります。

5.殺人

 シリアルキラーは、単に殺すだけでなく、殺人前、あるいは後に性的暴行を加えることがあります。彼らの供述によれば、殺す時こそ精神的なハイな状態が訪れるといいます。また、自然に起こるオーガズム、性的な解放感を報告している者もいます。

6.トーテム

 殺人によって得た快感や勝利の感覚も、被害者が絶命した後は急速に衰えます。そして、気持ちが急速に落ち込み始めます。殺人者は、何とか殺す時の快感を長く味わいたくて、被害者の一部を切断して持ち帰ったり、食べたりすることがあります。この被害者の一部を、トーテムといいます。

7.鬱

 殺人者のテッド・バンディは、本当のところ、殺人からは期待していたものを得られたためしはないと告白しています。実際、殺人が残したものと言えば、彼が果たそうとしていた感情の解放は結局達成できないのではないかというむなしい気持ちと絶望感だけだったといいます。また、この段階では、自分が犯した犯行にうんざりして、警察に告白の手紙を送る者もいます。

 

シリアルキラーの幼少期

 シリアルキラーの幼少期に見られる特徴としては次のものが挙げられる

①頭部損傷や、出産時に負った傷

➁両親がドラッグあるいはアルコール乱用者

③肉体的、精神的虐待、または残酷な養育態度の被害者

④困難な妊娠期間の影響

⑤子供時代の幸せが中断されたか全くなかった

⑥動物に対する極度の残忍性

 

彼らと向き合うにはどうすればよいか

 ここまで見てきたように、シリアルキラーとは自然発生的に生まれる怪物ではなく、幼少期のトラウマを抱えた精神疾患の持ち主といえます。彼らに対して必要なのは、単なる社会的制裁や非難ではなく、専門機関による精神的ケアであるといえます。また、彼らは人生の中で何度か助けを求めるときもあります。カールトン・ゲーリーは、刑務所から仮釈放される際、仮釈放審査会に、仮釈放しないでくれと助けを求めました。結局彼は仮釈放され、殺人を犯してしまいます。もし、当時彼の訴えが受け入れられていたら、その後の殺人は防げたかもしれません。このように、社会はシリアルキラーに対する接し方を考える必要があります。

 

参考文献

越智啓太,『ケースで学ぶ犯罪心理学』,北大路書房,2013

ジョエル・ノリス 吉野美恵子訳,『シリアル・キラー 心理学者が公開する殺人者たちのカルテ』,早川書房 ,1996

ロバート・K・レスラー&トム・シャットマン 相原真理子訳,『FBI心理分析官 異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記』,早川書房,2000

ロバート・K・レスラー 狩野秀之訳『快楽殺人の心理 FBI心理分析官のノートより』,講談社,1995

ピーター・ヴロンスキー 松田和也訳,『シリアルキラーズ 異常殺人大百科』,青土社,2015