悪魔的儀式虐待とは

みなさんは、悪魔的儀式虐待(SRA)が何かご存じですか。これは、悪魔崇拝者の儀式に子どもたちが供されて性的・肉体的に虐待されたとする事件です。そのような事実はないとする意見もありますが、実際に被害を訴える人々がいる以上、見過ごすことはできないでしょう。今回は、そんな悪魔的儀式虐待について考えていきます。

 

 

悪魔的儀式虐待とはどのようなものか

 悪魔的儀式虐待(SRA, Satanic Ritual Abuse)は、冒頭でもお伝えした通り、悪魔崇拝者の儀式に子どもたちが供されて性的・肉体的に虐待されたとする事件です。例えば、悪魔崇拝の儀式で妊娠させられた10代の少女が、出産間近の赤ちゃんを強制的に出産させられ、カルトのメンバーが見守る中、儀式的に子供を殺し、その心臓を食べさせられます。別の少女は、オオカミと一緒に電気の檻に入れられ、彼女の多重人格の一部である「オオカミの性格」を故意に作り出すために儀式的に拷問されます。

 これらの虐待の成人生存者は10万人以上存在し、治療を受けているといわれています。

 

『ジェニーのなかの400人』より ジェニーの例

 ジェニーの母親は、悪魔的儀式に参加していました。そのため、ジェニーも一緒に参加しなければなりませんでした。ジェニーは、悪魔的儀式に嫌がらず参加したため、より多くの儀式をさせられました。苦痛を与えられてもひるまなかったし、悲鳴もあげませんでした。ナイフで切られても、熱い聖油を注がれても、黙っていました。また、彼女は、おとな顔負けの冷静さで、人間のくるぶしの皮膚を切り取ることまでやってのけました。そんな彼女はある時、薬入りのワインを飲まされました。そして、儀式の中で殺しをすることを強要されました。彼女は、逃げることもできず、ただ従うしかありませんでした。

 

虚偽記憶症候群とは

 数多く報告された悪魔的儀式虐待の被害に対して、あまりの突拍子のなさに懐疑的になる人々が現れました。彼らは、一九九二年三月に虚偽記憶症候群財団をフィラデルフィアで設立しました。この財団は、成人した子供たちが、家庭内で行われた幼児虐待の恐ろしい記憶をセラピーで取り戻した、という経験を持つ親たちが団結した団体です。その使命は、心理療法にかかった患者たちが、起きてもいない子供の時の恐ろしい記憶を思い出した気分になるように仕向けられた可能性があることを、世間に向かって告げることでした。つまり、悪魔的儀式虐待は嘘であるということです。この点で問題なのは、子供たちがセラピストたちの手によって親から引き離されてしまうということです。

 

真実はどうなのか

 FBIなどの統計上は、そのような事実は認められません。FBIは結局アメリカ国内で悪魔崇拝者らが幅広く虐待を行っているという事実はないと結論を下しています。これはアメリカの特に宗教に熱心な地域社会で広まったものであるということで、悪魔崇拝者のレッテルを貼られたものに対する文字通りの現代の魔女狩りに過ぎなかったとしています。

 

参考文献

悪魔的儀式虐待 - Wikipedia

ブリトニー・スピアーズ「私はイルミナティの悪魔教儀式を受けた」 - Tanto Tempo (hatenablog.com)

The Hard Facts About Satanic Ritual Abuse | Christian.net

ジュディス・スペンサー 小林宏明訳,『ジェニーのなかの400人』,早川書房,1993

イアン・ハッキング 北沢格訳,『記憶を書きかえる 多重人格と心のメカニズム』,早川書房,1998

ローレンス・ライト 稲生太郎+吉永進一訳,『悪魔を思い出す娘たち よみがえる性的虐待の「記憶」』,柏書房,1999